建築と土木の違いがわからない|学科や業界の違いからおすすめ資格まで簡単解説

建築と土木の違いがわからない|学科や業界の違いからおすすめ資格まで簡単解説

「建築と土木と言えば男性の仕事」と言われてましたが、現代では女性も活躍しており就職先として注目を浴びています。 この建築と土木とはどのような違いがあるのかご存知ですか?この2つの分野は総称して「建設」と呼ばれており仕事でも関わりのある業界ですが、違いを正確に答えられる方は少ないです。
この業界に興味のある方や就職を考えている方に、違いやおすすめ資格などを分かりやすく解説します。

1.建築と土木の違いって何だろう?

みなさんは、建築と土木の違いをはっきり説明できますか? どちらかの業界で仕事をしている方は説明ができると思いますが、 一般の方には「建築はビルなどの建物工事、土木は道路工事」「建設設計の種類が違う」や 「地面の下が土木工事、地面より上が建築工事」などと漠然としていて、 はっきりと区別できないのではないでしょうか。 わかりやすく建築と土木の違いを解説します。

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1-1. 建築とは?

建築とは、建築基準法によると「建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転すること」です。 では建築物とは、何でしょうか。こちらも建築基準法に記載されています。下記の通りです。

建築物
土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、 これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、、学校、倉庫 その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、 貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
簡単にいうと、屋根と柱または壁があり人が安全に利用できる場所・空間のことです。 建築の仕事は、土木が構築した人工の環境に人々が安全で快適に利用出来る空間を作ることです。 建築工事としては、ビルやマンション・戸建て住宅、スポーツスタジアム等が該当します。

建築を学ぶには、大学では工学部や理工学部の建築学科と建築関連の専門学校があります。
大学や専門学校で建築学科を専攻することで建築士試験を受験条件である必要実務経験の年数が0~4年(普通科の方は7年以上)になりますので、 短期間で資格取得をお考えの方は建築学科を卒業することをおすすめします。

【参考記事】 ・建築CADとは?|図面種類・ソフト・資格・求人事情を簡単解説

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1-2. 土木とは?

土木とは、道路や橋、歩道橋、ダムなどの人が生活するのに必要または生活を便利にするためにつくることをいいます。 土木工事とは、上記のほか高架道路、宅地造成等が該当します。 簡単に説明すると建築物以外の工作物、構造物の工事が土木工事です。 杭基礎は土木工事なのか?杭基礎といっても橋脚のなどの杭基礎もあればマンションなどの杭基礎もあります。 杭の目的によって土木工事か建築工事かが決まります。橋脚の杭基礎は土木工事で、マンションなどの建物の杭基礎は建築工事です。各工事の基準でつくられます。

土木を学ぶには、大学では工学部、理工学部の土木工学科と土木関連の専門学校があります。
土木工学科を卒業すると(測量学および測量実習を修得後)申請するだけで測量士補資格を取得出来たり、 「土木施工管理技士」「管工事施工管理技士」など必要実務経験の免除などを受けられます。

【参考記事】 ・土木CADとは?|図面種類・ソフト・資格・求人事情を簡単解説

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2.建築と土木の仕事の内容

建築と土木の仕事ってどのようなものがあるのでしょう。代表的な仕事は、設計、土木作業員が挙げられます。 実際は、様々な仕事がありますが、いくつか簡単に解説したいと思います。

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2-1. 建築の仕事

建築の仕事は、細かく分けると設計、とび工、鉄筋・鉄骨工、内装デザイナーなど他分野にわたり幅広いです。大きくわけると営業、設計、施工管理です。

  • 営業は、発注者と会社のパイプ作りの仕事です。発注者の要望を社内担当者と連携を取り企画・提案書を作成します。
  • 設計は「構造設計」「意匠設計」「設備設計」に分かれています。設計職は建築士などの資格が必要とされます。
    構造設計は、建物に必要な強度などを計算し、設計を行います。
    意匠設計は、建物の外観や内部構成の設計を行います。内装デザインも行います。
    設備設計は、電気・機械(空調・水道などの)設備の設計を行います。設備は、専門的な資格や知識を必要とされる仕事です。
  • 施工管理は、現場監督が主な仕事となり鉄筋工事や内装工事などの施工計画を作成し、現場での工程管理・調整や品質管理などを行い、建築の知識や技術が必要とされます。

建築系の就職先として、設計事務所、総合建設業(ゼネコン)、ハウスメーカー、設備関連会社、コンサルタント、公務員(国・地方自治体)などがあります。

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2-2. 土木の仕事

土木の仕事は、営業・設計・測量・整地・施工計画・安全管理といった仕事があります。また工事の種類によって必要な技能や仕事内容は異なります。例えば、道路工事ではすり減ったアスファルトを一旦剥がしてから舗装しなおす作業や地中にある水道管などの交換作業があり、重機による掘削作業や撤去したアスファルトの運搬作業もあります。

土木系の就職先として、総合建設業(ゼネコン)、公務員(国・地方自治体)、インフラ、コンサルタントなどがあります。

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3.建築と土木の資格ってどんなものがあるの?

建築と土木の資格といっても、あらゆる分野に携わる資格があり多種多様です。 建築や土木の仕事の経験でとれる資格は何か?最近の傾向も踏まえて代表的な資格を見ていきましょう。

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3-1. 建築の資格

3-1-1. 建築士

建築物の設計において一番欠かせないのは「建築士」です。建築物の設計・工事監理をするには建築士にならないといけないからです。 建築士は国家資格で、下記の3種類があります。

  • 一級建築士
  • 二級建築士
  • 木造建築士
これらの資格を取得するには試験に合格する必要があり、試験を受けるにあたって受験資格があります。さらには、一級建築士資格を取得後に実務経験を積むことで受講資格を得ることができる下記2種類の資格があります。
  • 構造設計一級建築士
  • 設備設計一級建築士
詳細はこちらのHPをご確認ください→公益財団法人 建築技術教育普及センター

一級建築士

国土交通大臣より免許を受け(国家資格)、すべての建築物の設計・工事監理などの業務を行うことができます。

試験内容
学科試験 建築計画、建築積算、環境工学、建築設備、建築法規、構造力学、建築一般構造、建築材料、建築施工等(四肢択一)
製図試験 あらかじめ公表される課題に基づき設計図書の作成
平成28年度の合格率 学科16.1%、製図42.4%
二級建築士

都道府県知事より免許を受け(国家資格)、下記の設計や工事監理等の業務を行うことができます。

  • 高さ13メートル以下軒高9メートル以下の木造建築物(のべ床面積が300平方メートル-500平方メートル以下)
  • 高さ13メートル以下軒高9メートル以下で、学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーティトリアムを有しないものを除く)、百貨店以外の用途の、のべ床面積が500平方メートル超-1,000平方メートル以下の木造建築物
  • のべ床面積1,000平方メートル超の平屋建て一般木造建築物
  • 木造建築物以外:高さ13メートル以下軒高9メートル以下(のべ床面積:30平方メートル超-300平方メートル以下)
試験内容
学科試験 建築計画、建築法規、建築構造、建築施工(五肢択一)
製図試験 あらかじめ公表される課題に基づき設計図書の作成
平成28年度の合格率 学科42.3%、製図53.1%
木造建築士

都道府県知事より免許を受け(国家資格)、延べ面積300平方メートル以下の木造建築の設計・工事監理等の業務を行うことができます。

試験内容
学科試験 建築計画、建築法規、建築構造、建築施工(五肢択一)
製図試験 あらかじめ公表される課題に基づき設計図書の作成
平成28年度の合格率 学科61.4%、製図56.4%
構造設計一級建築士

構造設計一級建築士は、講習を受け修了考査に合格すると得られる資格です。法改正により、下記のような一定規模の建物を建てる場合には、設計を構造設計一級建築士自らが行う または 構造関係の規定に適合しているかの確認を構造設計一級建築士が行うという決まりができました。構造設計一級建築士は、これらをできる資格が与えられます。

  • 木造で高さ13メートル超又は軒高9メートル超
  • 鉄骨造で階数4以上
  • RC造又はSRC造で高さ20メートル超
  • その他政令で定める建築物
修了考査内容
修了考査 法適合確認(記述式)
構造設計(四肢択一及び記述式)
平成28年度の合格率 24.0%
設備設計一級建築士

設備設計一級建築士は、講習を受け修了考査に合格すると得られる資格です。法改正により、階数3以上で かつ のべ床面積が5,000平方メートル超の建築物の設備を設計する場合には、設備設計一級建築士が自ら行う または 設備関係規定に適合しているかの確認を設備設計一級建築士が行うという決まりができました。設備設計一級建築士は、これらをできる資格が与えられます。

修了考査内容
修了考査 法適合確認(記述式)
設計製図(記述式および製図)
※条件によって講義及び修了考査が免除されることがあります。
平成28年度の合格率 55.3%

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3-1-2. 建築施工管理技士

国土交通大臣より免許を受け(国家資格)、建築工事の施工計画の作成や現場での工事進行を指揮・監督をすることができます。 一級と二級があり、建築士に次いで建築業界で役に立つ資格だといわれています。
詳細は、こちらのHPをご確認ください→建築業振興基金

一級建築施工管理技士

一級建築施工管理技士は、大規模工事の施工計画の作成や現場での工事進行を指揮・監督をすることができます。また一定規模以上の民間工事において「監理技術者」になることができます。監理技術者とは、現場の技術水準を確保するために配置される技術者のことです。

試験内容
学科試験 建築学等、施工管理法、法規(四肢択一)
実地試験 施工管理法(記述式)
平成28年度の合格率 学科49.4%、実地45.6%

監理技術者の詳細は、こちらのHPをご確認ください→日本建築士会連合会

二級建築施工管理技士

二級建築施工管理技士は、中小規模工事の施工計画の作成や現場での工事進行を指揮・監督をすることができます。

試験内容
学科試験 建築学等、施工管理法、法規、施工(四肢択一)
実地試験 施工管理法(記述式)
平成28年度の合格率 学科51.9%、実地38.9%

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3-1-3. 管工事施工管理技士

国土交通大臣より免許を受け(国家資格)、空調設備や暖冷房設備・給排水・給湯設備などの施工・監理ができます。 一級と二級があり、一級管工事施工管理技士は指導監理的業務ができ、二級管工事施工管理技士は技術者として施工管理に携わることができます。
詳細は、こちらのHPをご確認ください→全国建設研修センター

一級管工事施工管理技士

一級管工事施工管理技士は、特定建設業のうち管工事業(指定建設業)の専任の技術者、左記業種の建設工事における主任技術者および監理技術者ができます。

試験内容
学科試験 一般基礎、建築設備一般、施工管理、関連法規(四肢択一)
実地試験 施工全般、法規・工程管理、経験記述(記述式)
平成28年度の合格率 学科49.0%、実地61.0%
二級管工事施工管理技士

二級管工事施工管理技士は、一般建設業のうち管工事業の専任の技術者、左記業種の建設工事における主任技術者ができます。

試験内容
学科試験 建築学等、施工管理法、法規(四肢択一)
実地試験 施工管理法(記述式)
平成28年度の合格率 学科66.2%、実地44.5%

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3-1-4. 建築CAD検定試験

一般社団法人 全国建築CAD連盟が実施している民間資格試験で、CADを使って建築図面を作成することに特化した資格試験です。准一級、二級、三級、四級があり、実技試験のみです。

試験内容
実技試験 課題により図面作成
平成28年度の合格率 准一級 12.2%、二級 55.1%、三級 72.1%、四級 91.1%

【参考記事】
・卒業後の就職支援制度が整っていて、学習・就職支援の費用が無料で提供されることもあるカレッジはこちら→無料の就職支援CAD講座「lulucadカレッジ」
建築CAD検定試験とはどんな試験? 試験概要から合格率までまとめました

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3-1-5. 建設設備士

国土交通大臣より免許を受け(国家資格)、空調・換気、給排水、電気などの建設設備全般に関する知識及び技能を有し、建設士に対して建設設備の設計・工事監理に関するアドバイスを行うことが出来ます。

試験内容
学科試験 建築一般、建築法規及び建築設備(五肢択一)
製図試験 建築設備基本計画、建築設備基本設計製図(記述及び製図)
平成28年度の合格率 学科27.5%、製図56.1%

詳細は、こちらの記事をご確認ください→公益財団法人 建築技術教育普及センター

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3-1-6. インテリアコーディネーター

社団法人インテリア産業協会が実施している民間資格試験で、住宅の居住性や機能性を考えインテリア商品の選択・配置・構成などの住空間のトータルコーディネートの能力を認定する資格です。

試験内容
学科試験 インテリア商品と販売の基礎知識、インテリア計画と技術の基礎知識(肢択一)
論文・プレゼンテーション インテリアコーディネーターとしての資質、能力、職業倫理(論文)
基本コンセプトの作成、プランニング、プレゼンテーションの総合的な実務能力(プレゼンテーション)
平成28年度の合格率 学科30.7%、論文・プレゼンテーション60.4%

【参考記事】
業種未経験でも取得できる!インテリアコーディネーター資格とは?

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3-2. 土木の資格

3-2-1. 土木施工管理技士

国土交通大臣より免許を受け(国家資格)、土木工事で主任技術者や管理技術者として工程・安全管理・施工管理計画、技術者への技術的な指導などを行うことができます。一級と二級があります。
詳細は、こちらの記事をご確認ください→全国建設研修センター

一級土木施工管理技士

一級土木施工管理技士は、道路・橋梁・上下水道などの土木工事で主任技術者や管理技術者をすることができます。

試験内容
学科試験 土木一般、専門土木、法規、共通工学、施工管理(四肢択一)
実地試験 土工・コンクリート工・施工計画・工程管理・安全管理・品質管理(記述式)
平成28年度の合格率 学科55.0%、実地36.7%
二級土木施工管理技士

二級土木施工管理技士は、土木・鋼構造物塗装・薬液注入の3種類に特化しており、各工事の工程管理や安全管理が行える主任技術者をすることができます。

試験内容
学科試験 土木一般、専門土木、法規、共通工学、施工管理(四肢択一)
実地試験 施工経験記述、施工管理、工程管理、施工、法規(記述式)
平成28年度の合格率 学科48.3%、実地29.9%

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3-2-2. コンクリート診断士

公益社団法人日本コンクリート工学会が実施している民間資格試験で、建物に使用されているコンクリートの寿命診断・維持管理を診断し、適切な補修・補強をうながすことができます。

試験内容
学科試験 コンクリートの変状、劣化、調査手法、評価・判定、補修・補強(四肢択一)
診断士としての適性(記述形式)
平成28年度の合格率 14.8%

詳細は、こちらの記事をご確認ください→日本コンクリクート工学会

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4.まとめ

建築と土木の違いを理解いただけましたか。建築と土木業界で役立つ資格は多数ありますが、そのほとんどが学科試験と実地試験の両方に合格しないといけない難関試験です。建築分野で最も役立つ資格は一級建築士、土木分野では一級土木施工管理技士と言われています。どちらも難易度が非常に高いですが、資格取得した実務者からも仕事の幅も広がり役立つ資格だと支持を得ています。

昔は、建築や土木というと男性の仕事と言われていましたが、現在は女性も資格を取得し数多くの方が活躍しています。女性からも安定して仕事ができる、やりがいや達成感を得られると人気の業界となっています。業界未経験者または受験資格が満たない方は、類似の資格取得をする または CADオペレーターで働きながら、より専門的な職へのステップアップを目指してもよいと思います。

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