建築CAD検定試験とはどんな試験? 試験概要から合格率までまとめました

建築CAD検定試験とはどんな試験? 試験概要から合格率までまとめました

建築CAD検定試験とは日本で初めて誕生した歴史あるCADの資格試験です。ここでは、試験の概要や、学習方法、合格率がどれくらいかなど、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

目次

1. 建築CAD検定試験とは?

では建築CAD検定試験は一体どんな資格なのでしょうか?資格の概要や主催団体について詳しく解説します。

1-1. 資格概要

建築CAD検定試験は、文字通り建築図面をCADを使って作図することに特化した実践型のCAD資格試験で、1993年に誕生した国内初の建築CADの民間資格試験です。

試験は暗記で対応できる筆記試験ではなく、実務レベルの建築設計図面を、CADソフトを使用して一定の時間内で作成することを求められます。まさに実践型の実技試験と言えます。

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1-2. 主催団体と教育機関

建築CAD検定試験は、一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)が主催し、現在全国630校を超す職業訓練校や建築系大学、専門学校、工業高校などの教育機関でも実施されています。

近年は電気・機械・設備・土木系学科などの建築系学科以外の高校生による受験者も年々増加しており、公益社団法人全国工業高等学校長協会・ジュニアマイスター顕彰制度の対象資格で、合格者はジュニアマイスター制度の得点を得ることができます。 これまでの総受験者は99,100名にも達し、現在70,500名の有資格者が様々な建築関連企業で活躍しています。(平成29年5月現在)

出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

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2. 受験方法は2種類

建築CAD検定試験は、2種類の受験方法があります。一つは一般受験、もう一つは団体受験です。ここではその2つをそれぞれ詳しく解説します。

2-1. 一般受験

一般受験とは、個人で申込み受験する方法で、年に2回(4月・10月)実施されます。 社会人の方や、あるいは学生の方でも所属されている学校が団体受験の登録をしていない場合はこの一般受験での受験となります。

2-1-1. 受験方法について

受験方法はCADソフトを使って作成する実技試験になります。受験方法は次の2種類から選べます。

  • 試験会場に設置されたパソコンを使って試験を受験する
  • CADソフトをインストールした自分のパソコンを会場に持ち込んで受験する

試験会場は毎回異なり、また会場の所在地や設置CADソフトもそれぞれ異なります。一般受験の会場一覧は、願書受付開始時期にあわせ、主催団体である一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)公式ホームページ上で発表されます。 試験会場に設置されたパソコンを使用する場合は、AACL公式ホームページにて会場所在地・試験実施級・会場設置のCADソフト等を確認の上、受験の申し込みを行いましょう。

2-1-2. 実施要項

准1級 2級 3級
受験資格 規定無し
試験時間 実技:4時間10分
(設定10分、準備30分、
作図3時間30分)
13:00~17:10
実技:5時間
13:00~18:00
実技:5時間
13:00~18:00
受験料 14,400円 10,300円

※上記受験料は、消費税込みの金額です。
※4級試験は高校の団体受験のみ実施のため、一般の方は受験できません。

出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

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2-1-3. 申込み方法について

建築CAD検定試験の申し込み方法は次の2種類があります。

  • AACL公式ホームページの申込みフォームから直接申込みをする
  • 電話やメールまたはAACL公式ホームページ内の「資料請求ページ」より受験願書を取り寄せ、郵送にて申込みをする

申し込み日が願書締め切り間近の場合、郵送での申し込みは利用できません。その場合、公式ホームページの申込みフォームからのみの受付となりますので、郵送でのお申込みをご希望の場合は期日にゆとりをもって申し込みましょう。

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2-1-4. 受験料のお支払い方法

受験料のお支払い方法は申し込み方法によって2種類の方法があります。

  • AACL公式ホームページの申込みフォームから直接申込みをする場合
    →コンビニ決済・ネットバンク・クレジットカード・払込票(郵便局とコンビニで利用可)
  • 電話やメールまたは受験願書を取り寄せ、郵送にて申込みをする場合
    →郵便局の払込票のみ

  • 払込票によるお支払いをご希望の場合、申込み後「払込票」がお手元に届くまで3~4日程度かかります。よって申し込み日が願書締め切り間近の場合、受験料のお支払いでこの「払込票」を希望しても利用することができません。払込票でのお申込みをご希望の場合は期日にゆとりをもって申し込みましょう。

    願書を郵送で申込む場合は、受験料のお支払い方法は郵便局の払込票となります。その場合、受領証(領収証)を願書の所定の位置に貼付け、願書締切日までに「簡易書留」でAACLまで郵送(消印有効)します。詳細は願書同封の受験案内書を確認しましょう。             

    支払期限は、基本的には申込み日より7日間ですが、申込みの際に自動返信される(クレジット決済を除く)確認メールにも記載されています。また願書締切日当日に申込む場合は、支払期限も願書締切り日と同日になります。記載の支払期限を過ぎるといづれの方法も決済ができなくなり、申込内容はすべてキャンセル扱いとなるので注意しましょう。

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    2-1-5. 受験できる条件.

    特に規定はありません。何級からでもどなたでも自分のスキルに合った級を受験できます。

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    2-2.  団体受験

    団体受験はCADを教えている教育機関(大学、短大、専門学校、高校、職業訓練校、CADスクール)が、自らの学生に対してその学校を会場とし試験を実施する受験する方法です。現在、全国に約630校ある「試験認定校」として連盟が認定教育機関で、年4回(4月・7月・10月・1月)希望者1名からでも実施されます。社会人の方やAACL試験認定校以外の学生の方々は一般受験にて申込みましょう。

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    2-2-1. 受験方法について

    団体受験は受験希望者が通っている教育機関がそのまま試験会場となります。学校内に設置されたパソコンを使って試験を受験します。試験日は、各々の教育機関が予め指定した試験日(試験月の日曜日)のなかから都合の良い日時を選択し受験できます。

    実施月 受験可能級 試験日時の指定 試験会場
    一般受験 4月・10月 准1級・2級・3級 不可 受験者が希望会場を選択
    ※准1級は10月のみ
    団体受験 4月・7月・10月・1月 ※准1級は10月のみ  准1級・2級・3級 各学校が自らの施設で実施

    出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

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    3. 試験は全部で6等級

    建築CAD検定試験は、全部で6つの等級に分けた試験が設けられています。ここではそれぞれの等級について詳しくポイントを解説します。

    3-1. 建築CAD検定試験 4級

    3-1-1. 試験概要

    4級試験はCADソフトの基礎的な能力、すなわち実務で建築図面を描くにあたり最低限必要とされる、線分や円、四角形などの基本的な作図コマンドの操作能力が要求されます。 試験問題もその基本的な操作を理解していないと完成できないように作られています。 試験問題に書かれた詳細な指示に対して、作図方法を瞬時に判断する能力と同時に、 それを正確に描くための十分なCADソフトの操作スキルを持っているかを試されます。

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    3-1-2. 試験詳細

    • 試験時間:2時間
    • 試験内容:与えられた建築図面をCADシステムを使って正しくトレースする実力を備えているかを問う。試験は実技試験で、建築図面の要素を取り出して作成した参考図をもとに、完成図を一定時間内に作成する。問題数は3題で、難易度は3級検定試験より低い。

    <例>
    ・柱・壁・間仕切壁(S=1/100)
    ・通り芯・寸法・通り芯記号(S=1/100)
    ・壁と窓(S=1/30)      など

    出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

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    3-1-3. 受験料

    3,100円(税込)
    ※4級試験は高校の団体受験のみ実施のため、一般の方は受験できません。

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    3-1-4. こんな方に向いています

    4級の合格者像は『実社会で求められるCADトレース技術者』です。
    建築図面を作図する基礎を問われるので、将来建築業界または建築に関連する業界を目指す学生の方におすすめの試験と言えます。

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    3-1-5. 合否判断基準とポイント

    • 合否判断基準:200点満点中 130点~140点を目安とする。
    • ポイント:試験問題の各課題図面で提示される「参考図」が実務での「設計者からの詳細な指示」に相当し、設計者から「詳細な指示」が与えられればCADシステムで建築設計図を描ける(トレースできる)人材であるかを判定します。

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    3-2. 建築CAD検定試験 3級

    3-2-1. 試験概要

    4級試験はCADソフトの基礎的な能力、すなわち実務で建築図面を描くにあたり最低限必要とされる、線分や円、四角形などの基本的な作図コマンドの操作能力が要求されます。 試験問題もその基本的な操作を理解していないと完成できないように作られています。 試験問題に書かれた詳細な指示に対して、作図方法を瞬時に判断する能力と同時に、 それを正確に描くための十分なCADソフトの操作スキルを持っているかを試されます。

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    3-2-2. 試験詳細

    • 試験時間:2時間
    • 試験内容:与えられた建築図面をCADシステムを使って正しくトレースする実力を備えているかを問う。試験は実技試験で、建築図面の要素を取り出して作成した参考図をもとに、完成図を一定時間内に作成する。なお問題数は4題である。

    <例>
    ・階段平面図 (S=1/30)
    ・通り芯・寸法・通り芯記号 (S=1/100)
    ・柱・壁・間仕切壁(S=1/100)
    ・壁と窓(S=1/30)      など

    出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

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    3-2-3. 受験料

    14,400円(税込)
    ※団体受験の場合、2・3級を同時申込み(併願)の場合は受験料が割引され、2級・3級合せて16,500円となります。その他の級の併願割引はありません。

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    3-2-4. こんな方に向いています

    3級の合格者像は『実社会で求められるCADトレース技術者』です。
    建築業界への就職・転職を目指すや建築図面を作図するCADオペレーターを目指す方、またはそれに従事する方のスキルチェックにも向いている試験と言えます。3級の資格を取得することで、図面の確かなトレース技術を証明することになるので、就職にも有利になるでしょう。

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    3-2-5. 合否判断基準とポイント

    • 合否判断基準:200点満点中 140点~150点を目安とする。
    • 試験内容:ポイント:4級試験同様、試験問題の各課題図面で提示される「参考図」が実務での「設計者からの詳細な指示」に相当し、設計者から「詳細な指示」が与えられればCADシステムで建築設計図を描ける(トレースできる)人材であるかを判定します。

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    3-3. 建築CAD検定試験 2級

    3-3-1. 試験概要

    多数の参考図の正確な読取りによる「平面詳細図」と「南立面図」の作成が出題されます。平面詳細図では建築図面への理解度とCAD操作についての高い知識と能力(正確性とスピード)を測り、南立面図では参考図にあるいくつかの2次元図面からその建物の形状を理解・想像する能力を試します。

    例年、課題になるのは「2×4(ツーバイフォー)工法」という住宅工法で設計された木造住宅の図面で、平面図を元に平面詳細図を作成する他、平面・断面・屋根伏図などのいくつかの図面を元に立面図を作成するという2つの問題が出題されています。

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    3-3-2. 試験詳細

    • 試験時間:5時間
    • 試験内容:自らの持つ建築知識をもとに、CADシステムを使って建築図面を作成する実力を備えているかを問う。試験は実技試験で、一定時間内に下記の例に示す建築一般図を2面作成する。

    <例>
    ・設計者の描いたラフなスケッチ(S=1/100)をもとに平面詳細図(S=1/50)を完成させる
    ・平面図、断面図、屋根伏図(S=1/100)をもとに立面図(S=1/50)を完成させる   など

    出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

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    3-3-3. 受験料

    10,300円(税込)
    ※団体受験の場合、2・3級を同時申込み(併願)の場合は受験料が割引され、2級・3級合せて16,500円となります。その他の級の併願割引はありません。
    ※准1級と2級は原則同時間に開始し、会場によっては2・3級、准1級・3級を同時に開始する場合もあります。そのため同一会場での併願ができない場合があるので併願希望の方は、受験級ごとに会場を分けて申込むようにしましょう。

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    3-3-4. こんな方に向いています

    2級の合格者像は『実社会で求められる一般建築図を作図できるCAD技術者』です。
    建築の基礎知識や設計に関する基本的な知識はもちろん、立面図を作成することからも建物や形状を立体的に把握するスキルも必要となります。

    建築業界への就職・転職を目指す方や、建築平面図を作成するCADオペレーターからさらなるスキルアップを目指す方、またはそれに従事する方のスキルチェックにも向いている試験と言えます。

    またこれから3次元CAD(3DCAD)を習得したい方にも、2次元である平面図の知識や技術を立体的に把握しイメージするスキルを身につける上でもおすすめです。実務レベルを証明するには、2級以上を目指すことがおすすめです。この資格を取得していることで即戦力のあるCADオペレータや設計補助者として認められるので、採用率や収入アップも見込めるでしょう。

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    3-3-5. 合否判断基準とポイント

    • 合否判断基準:200点満点中 140点~150点を目安とする。
    • 試験問題の各課題図面で提示される「参考図」が実務での設計者のラフスケッチに相当し、自らの建築知識をもとに設計者から与えられた「図面のラフスケッチ」から、CADシステムで実務で必要な一般建築図を描く能力がある人材であるかを判定します。

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    3-4. 建築CAD検定試験 准1級

    3-4-1. 試験概要

    准1級は建築CAD検定試験の最上位の級です。
    過去の一級建築士国家試験の設計製図課題に準拠した密度と分量の課題図面を、規定時間内に完成させるために必要なあらゆる技術と能力が求められます。建築図面やCADシステムやソフトの機能に深く精通していることはもちろんのこと、CAD操作のスピードとテクニックについても高いスキルを持ち、自身の経験で培った作図において工夫する力や作図工程を読み解く力など、建築図面の作図能力とCADソフトの操作技術すべて合わせた「総合力」が要求されます。

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    3-4-2. 試験詳細

    • 試験時間:4時間10分
    • 試験内容:課題として与えられた建築図面(RC構造等)を、自らの建築製図知識とCADの経験を駆使したうえ、建造物の特性を理解した適切な判断によるトレースを行なってこれを完成させる。 試験は実技試験で、下記の例に示す建築一般図を4面作成する。

    <例>
    ・配置図、1階平面図、外構(S=1/200)
    ・2階平面図(S=1/200)
    ・基準階平面図(S=1/200)
    ・断面図(S=1/200)   など
    ※建物の種類によって課題図面の種類が異なる場合があるが、全体の図面密度は同程度である

    出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

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    3-4-3. 准1級の受験方法

    准1級のみ受験時の試験時間について、内訳が決められています。
    試験時間4時間10分の内訳は、CADシステムの設定で10分、課題図面の読み取りで30分、作図を3時間30分とし、専用の「試験時間記録ツール」(時間管理ソフト)を使用し実施されます。

    • CADシステムの設定(10分)
      試験開始後すぐに、10分間のCADシステムの設定時間が与えられます。ショートカットキーの設定や作業効率の高いかつ自らが使用しやすいCAD環境の設定をここで行います。
      団体受験などの受験者で、CADの設定がすでに済んでいる場合などは、この間は次の「課題図面の読み取り・入力計画」の時間まで静かに待機します。
      なお、このCADシステムの設定時間中は、試験問題を開くことは禁止されていますのでご注意下さい。
    • 課題図面の読み取り・入力計画(30分)
      与えられた各課題図面を読み取り、いかに早く効率よく作図するかをここで計画します。
      一般には、この課題図面を作図する際は、例えば1階平面図が完成したら、これを2階用としても保存し、1階と異なる部分を修正しながら2階平面図として仕上げますが、この方法はこの試験では適していません。
      すなわち、各図面の作成の全体を見越し、共通部分などを先に描き各階の図面用として保存する方法が必要となります。共通部分とは、例えば躯体、階段、エレベータ、PS、DSなどです。
      准1級の課題図面は膨大な分量のため、この試験にとってこの入力計画の時間は大変重要になります。
    • 課題の作図(3時間30分)
      課題図面(全4面)では、柱・壁の位置など必要最低限の寸法しか示されませんので、寸法指定のない箇所は、建物の種類(用途)や特性を理解した自らの適切な判断により作図していきます。
      准1級の問題は縮尺が1/200です。従って建物の企画段階の図面であるため、寸法指定のない箇所は、図面の各部が適切なサイズ・規格サイズであれば、試験問題と多少異なっていても問題はありません。ただし、法律に適合するサイズは確保したほうが望ましいため、例えば階段などはバリアフリー新法(ハートビル法の後継法)に規定されるサイズ等は理解されておくことが望ましいと考えます。

    • 出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

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      3-4-4. 受験料

      10,300円(税込)
      ※准1級と2級は原則同時間に開始し、会場によっては2・3級、准1級・3級を同時に開始する場合もあります。そのため同一会場での併願ができない場合があるので併願希望の方は、受験級ごとに会場を分けて申込むようにしましょう。

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      3-4-5. こんな方に向いています

      准1級の合格者像は『実社会で活躍するCAD技術者というレベルをはるかに超えた、他に比して秀でた知識と能力を持ち備えたCADのスペシャリスト』です。
      建築業界への就職・転職を目指す方や、建築CADオペレーター・CADデザイナーからさらなるスキルアップを目指す方、一級建築士・二級建築士の資格取得を目指す方など、あらゆる建築関連業界でのスペシャリストを目指す方やまたはそれに従事する方のスキルチェックにも向いている試験と言えます。また准1級を取得していると、実務でも即戦力と認められますので転職にも大変有利です。

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      3-4-6. 合否判断基準とポイント

      • 合否判断基準:4図面すべて完成の場合を合格とする。
      • ポイント:准1級の採点基準については公式にも詳細が発表されていません。准1級試験も課題図面をトレースする試験ですが、同じトレース試験の3級・4級とは試験の内容も性格も全く異なります。

        また試験時間も4時間10分と長く、尺度も1/200と図面内容が細かいですが、CADにおける作図のコツを知っていると時間や操作を短縮できるポイントが多数あります。どんな図面でも読めるように建築の基礎知識を身に付ける他、CADを思い通りに操作できるようCADの機能をマスターし、なおかつ効率的に作図するためにも入力スピードを上げる練習も行うとよいでしょう。

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      4. 試験で使用するCADソフトについて

      建築CAD検定試験は、各級とも汎用のCADソフトを使用して受験します。汎用CADとは、AutoCAD、AutoCAD LT、Jw_cad for Windows、Vector Works、DRA-CADなど、図面の自動生成機能を持たないCADソフトのことで、建築専用CADでの受験はできません。
      2016年度の各級の受験に使用されたCADソフトの傾向を見てみましょう。

      准1級 2級 3級 4級
      AutoCAD 26.2% 17.6% 20.5% 1.5%
      Vectorworks 4.8% 2.1% 6.1% 1.0%
      Jw_cad 57.1% 77.8% 72.6% 96.1%
      DraftSight 7.1% 1.5% 0.0% 0.0%
      DRA-CAD 4.8% 0.0% 0.0% 0.0%
      V-nas 0.0% 0.0% 0.0% 1.1%
      その他 0.0% 1.0% 0.8% 0.3%

      出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

      各級において一番多く使用されたのは、建築業界シェアNo1のJw_cadです。2次元CADソフトとして無料で提供されていることも人気の理由です。続いては様々な設計業務で幅広く利用されているAutoCADで全体の3割近くを占めています。CADソフトによっては、図面データをPDFファイルに変換して提出する場合もありますが、汎用CADであればご自身の使い慣れたCADで受験が可能です。

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      5. 建築CAD検定試験の過去問題学習方法

      建築CAD検定試験は各級とも出題内容が予め決められています。
      そのため、学習方法は出題内容を踏まえた問題集や図面を繰り返しCADで描く練習をすることが基本です。では具体的にどのような学習方法があるのか、いくつかご紹介します。

      5-1. 「建築CAD検定試験問題集」で学習する

      「建築CAD検定試験問題集」は主催連盟である一般社団法人全国建築CAD連盟(AACL)が発行している公式過去問題集で、本問題集は、過去1年間に出題した試験問題(各回より1題づつ)を掲載しています。

      公式にも言われている通り、過去問題を繰り返し解くことが建築CAD検定試験合格への近道です。できる限りたくさんの作図問題を練習しておきたいものですが、あまり古い過去問題は出題傾向も変わっているためおすすめしません。

      入手可能であれば直近3年分ぐらいの問題を予め作図する練習をしておくとよいでしょう。毎年、前年度に出題された新しい試験問題集が発売されるので、必ず受験する年度の最新版を購入し、学習するようにしましょう。問題集はAACL公式サイトで購入することができ、郵便局に備付けの払込用紙でも購入の申込みが可能です。

      5-2. 「建築CAD検定試験 公式ガイドブック」で学習する

      「建築CAD検定試験 公式ガイドブック」はエクスナレッジムックから出版されている文字通りの公式ガイドブックで,全国建築CAD連盟顧問である鳥谷部真氏著書であることでも知られています。AACL公式ホームページにも連盟公認の書籍として紹介されています。

      受験要項の他、採点基準・過去問題はもちろん、実際に出題された問題の解法例を掲載し、試験に必要な基礎知識をわかりやすく解説しています。毎年新しい公式ガイドブックが発売されるので、できる限り受験する年度の最新版を購入し、学習するようにしましょう。また電子書籍は出版されていないので書店で購入しましょう。

      5-3. その他の学習方法

      • 学校やスクールに通う
        AACL公認の教育機関に通学している団体受験で試験を受ける方は、日々の授業で学ぶことができますが、一般受験で試験を受ける方は建築CAD検定試験用に対策講座を設けているスクールに通って学ぶこともできます。講師から直接学ぶことは、合理的な作図方法やCADの操作方法を教えてもらえたり、傾向や対策についても質問ができるので安心して学習できるメリットがあります。通うことが難しい方は、インターネットで受講できるWEB講座を設けているスクールを探してもよいでしょう。

      • 独学で学ぶ
        建築CAD検定試験は独学でも3級までは取得できると言われています。
        独学で学ぶ際は、基本的な建築知識を学べる書籍を購入し身に付けることはもちろん、CADソフトの操作を習熟するとよいでしょう。汎用CADソフトは様々な種類がありますが、業界シェアの高いJw_cadの他、将来的にAutoCADを習得したい方は、操作方法やインターフェイスがAutoCADと似ているDraftSightもおすすめです。いずれも公式サイトよりダウンロードすることで無料で使用できるので、ご自身の使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
        しかし実際のところ、独学で実務レベルの知識や技術を身に付けるのは非常に難しいです。独学の場合は、建築業界に就職・転職した後、実務で経験を積みながら上位の級を目指す方法もありますので、まずは3級取得を目指してみましょう。

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      建築CAD検定試験 公式ガイドブック

      全国建築CAD連盟顧問 鳥谷部真(著)

      公式ガイドブックでは、実際に出題された問題の解法例や建築CAD製図のQ&A、受験案内がわかりやすく解説されています。この本を学習することで基礎知識から出題傾向まで建築CAD検定試験についてより詳しく理解することができるでしょう。


      本書は「建築CAD検定試験」の公式ガイドブックです。
      受験要綱・採点基準・過去出題問題はもちろん、実際に出題された問題の解法例を掲載し、 試験に必要な基礎知識をわかりやすく解説しています。
      4級から准1級まで全てのレベルに対応し、2級・3級の解法例をJw_cadとAutoCADで解説。 初心者にやさしいCADによる製図のポイントを解説するQ&Aも掲載されています。
      ※建築CAD検定試験は、1993年国内で初めて実施された実践型の建築CADの資格試験です。
      2016年度の受験申込者数は過去最高の8104名に上るなど、 建築系のCAD資格試験としては受験者数・規模ともに日本では最大級です。

      出典:amazon

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      6. 建築CAD検定試験の合格率について

      6-1. 各級の受験申込者数

      建築CAD検定試験の受験申込者数について、AACL発表の各級・各年度の人数は2014年より受験人口が約1000人単位で毎年増加しています。また2級資格の取得者数が増えていることからも今日の建設業界にとって、CADソフトのスキルの有無が採用においても大きなファクターとされていることが伺えます。今後も建築に特化したCADオペレーターのスキルは、ますます求められていくことが予想できます。

      受験申込者数の推移

      出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

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      6-2. 各級の合格率と難易度

      建築CAD検定試験の合格率について、AACL発表の各級・各年度の割合はこのようになっています。

      級/年度 2016年度 2015年度 2014年度 2013年度 2012年度
      准1級 12.2% 35.7% 0.0% 28.5% 32.8%
      2級 55.1% 55.7% 55.7% 55.1% 57.4%
      3級 72.1% 78.9% 73.4% 76.7% 75.9%
      4級 91.1% 90.1% 88.9% 91.2% 90%

      出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

      3級までは7割を超える高い合格率となっていますが、2級では約5割となっています。さらに准1級になると、前年度でも1割程度、2014年に至っては合格者が0人となっている程、難易度も急激に上がり、合格の難しさが統計からも読み取ることができます。そういったことからも2級以上の資格を取得していると就職・転職の際の自己アピールにも非常に有用な資格であると言えるでしょう。

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      7. 認定証について

      合否結果通知書の発送の際、合格者には認定級が明記された「認定証」の発行手き方法が通知されます。認定証にはの2タイプあり、それぞれ発行手数料がかかります。

      認定書の種類 サイズ 発行手数料
      カードタイプ 54×85mm 2,500円
      証明書タイプ B5サイズ 2,000円

      カードタイプは54×85mmと通常のカードサイズなので財布などに入れて携帯でき、証明書タイプはB5サイズの紙なので壁に飾ることができます。どちらかを選ぶこともできますが、2タイプどちらも希望することも可能です。認定証を希望されない場合は合格通知書が有資格者としての証明になります。合格通知書は再発行されませんので大切に保管しましょう。

      また認定証の発行申込期限は、結果通知書の発行日より1年間です。期限内に手続きの申請が行われない場合、認定証取得の権利が失効となります。
      ※認定証を取得しない場合、有資格者として認定されないことはありませんが、その場合電話での資格照会となります。

      出典:建築CAD検定試験 – 一般社団法人 全国建築CAD連盟(AACL)

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      8. まとめ

      建築CAD検定試験は、ご自身の経験や建築知識をもとに与えられた条件のもと、建築一般図を作成する能力や、CADシステムを使って正確に迅速に、かつ合理的にトレースする技能を試されます。CADソフトのスキルや技術のみでなく基礎的な建築知識も必要な、数あるCADの資格試験の中でもより実務に近い資格試験です。

      建築分野の業種や職種では近年、従来紙でやりとりされていた図面情報をすべてデータ化し、リアルタイムに共有することで生産性向上やコスト削減を図る取り組みが行われています。そういったことからも建築CAD検定試験は企業のニーズに十分に対応できる即戦力となる人材育成も目的とされています。

      設計事務所、建設会社、不動産会社、ハウスメーカの他、内装会社、デザイン会社などでは、CADソフトを使用し日々施工図や意匠図をはじめとする設計図のほか、インテリアのレイアウト図や3Dパースが作成されています。

      こうした図面を描くためには、スムーズにCADソフトを操作できる必要があります。とはいえ、CADソフトを一から習得するとなると時間もお金もかかるもの。「資格試験を目指しながら、CADソフトの操作も身に付けたいな…」という方には無料で学べるCADスクールがおすすめ。

      業界トップシェアのCADソフト「AutoCAD(オートキャド)」の基本を、未経験者の方に向けて一から無料でレクチャー。はじめてCADを学ぶ方でも、就職までしっかりサポートしてもらえるので安心して通うことができます。

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      一級・二級建築士だけでなく、キッチンスペシャリストやインテリアコーディネーターなどの資格と合わせて取得される方も多い「建築CAD検定」資格。建築業界での設計を目指すはスキルチェックもかねて是非チャレンジしてみてくださいね。

      【参考記事】
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      建築CADとは?/ソフトの種類や検定試験、求人事情まで解説
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